上海のラーメン店「博多一蘭」(筆者撮影、以下同)

(山田 珠世:中国・上海在住コラムニスト)

 数カ月前のある週末、家族で外食しようと上海の自宅近くにあるショッピングモールに足を運んだときのこと。どのお店にしようかとモール内を歩いていたところ、福岡の豚骨ラーメン店「一蘭」ののれんが目に入った。「上海で、おまけにこんなに家の近くで『一蘭』が食べられるなんて!」とうれしくなり、入ってみることにした。

 店に入ってはみたものの、店員の反応がまったくない。客はまばらなので、忙しくはないはずだ。ところが家族で入り口に立っているのに、数分経っても店員は見向きもしない。「あれ?」というのが、最初に感じたことだった。

 夫が店の奥の方に向かって「すみませーん」と声を上げたものの、依然反応はなし。再度、「座ってもいいですかー?」と聞いて、勝手に着席することにした。あまり良い感じではない。

 着席しても店員は出てこない。結局、「やはりここで食べるのはやめよう」ということになり、失礼だとは知りつつも店を後にした。

 本当にあの店は一蘭なのだろうか? 気になって自宅に戻ってから調べてみると、一蘭のニセモノのようだということが分かった。本家の一蘭のサイトを見ても、中国本土で店舗展開しているという事実が見当たらなかったからだ。ロゴも微妙に異なる。やはりあのまま食事をしないでよかったと改めて思った。