ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長(2018年11月資料写真、写真:ロイター/アフロ)

 ソフトバンクグループが四半期で3.2兆円という過去最大の赤字を計上した。昨年(2021年)、巨額黒字を計上したかと思えば、一転して赤字転落するなど、ジェットコースターのような経営となっているが、これは、同社が事実上の投資会社になっていることが原因である。上場というのは、基本的に事業会社を前提とした仕組みであり、投資会社というのは上場にはあまり馴染まない。同社以外にも課題を抱えた投資会社は多く、上場のあり方が問われる可能性も出てきている。(加谷 珪一:経済評論家)

会計上の赤字と黒字に過ぎない

 ソフトバンクグループが発表した2022年4~6月期決算は、純損益が3兆1627億円の赤字と、四半期決算としては過去最大になった。同社は2021年1~3月期決算において1兆9328億円の黒字を計上しているが、2022年1~3月期には2兆1006億円の赤字となり、2四半期連続の巨額赤字である。

 同社の業績が、一般常識では考えづらい数字となっている最大の理由は、同社が事業会社ではなく、投資会社化しているからである。

 企業決算のルールは、基本的に物やサービスを売買するという、一般事業会社の形態を想定して作られている。売上高が減って、コストが粗利を上回れば赤字になり、赤字額相当分のキャッシュが会社から流出する。もっとも、資産の評価損や減価償却など、キャッシュアウトを伴わない帳簿上の費用(赤字)も存在するが、事業会社の場合、基本的に赤字=キャッシュアウトと考えて差し支えない。

 ところが一般的な事業会社ではなく、投資会社、もしくはそれに近い事業形態の場合、投資先企業の時価総額の増減を、そのまま損益計上しなければならず、市場の動向次第でその金額は大きく上下する。これはあくまでも、投資した企業の時価総額が増減しているだけであって、現実にその分のキャッシュが会社から出ていったわけではない。