キーウ近郊のブチャではロシア軍による蛮行も明らかになり世界中から非難が殺到した(身元の分からない市民を埋葬し祈りを捧げる牧師、8月17日、写真:AP/アフロ)

連携成功なら短期間でウクライナ征服

 ロシアとウクライナの戦いでは、「ハイブリッド戦*1が機能しなかったのではないか」「最終的には、ミサイルや砲弾が飛び交う正規戦が勝負を決める」という印象を持ってしまいがちだ。

 それでは、ロシアはハイブリッド戦を大々的に仕掛けなかったのだろうか。

 それとも、ウクライナに作戦を見破られて機能しなかったからなのだろうか。

*1=「正面切った戦いに訴えない多次元のアプローチ」によって各種能力が運用される恐れを「ハイブリッド脅威」と定義し、「ハイブリッド戦争」という場合には、軍事と非軍事の両方の手段を活用した戦争である(松村五郎元陸上自衛隊東北方面総監)。

 ロシア軍の侵攻開始から約半年が過ぎ、ロシアが仕掛けていた見えない戦争(非正規戦)が少しずつ見えてきた。

 7月になって、ロシア軍による非正規戦の情報やサイバー戦に関する情報が、ウクライナ参謀部から報告されるようになってきたのだ。

 ロシアの非正規戦が実施されたことは、JBpress『ウクライナ侵略でロシアが行った非正規戦、その卑劣な実態』(2022.8.11、https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/71338)で解説したとおりだ。

 今回は、その非正規戦について、さらに一歩踏み込んだ。

 非正規戦の内容は地上戦とつながっている。それが成功していた場合は、ウクライナ全域が占領された可能性があると思えるのだ。

 このため、非正規戦とロシア軍地上侵攻とつなげて、作戦の狙いを再検討してみる必要があると考えた。

 非正規戦と正規戦を重ね合わせて分析する。