(英フィナンシャル・タイムズ紙 2022年8月9日付)

だらだらと何十年も続く国際紛争は、決して終わることのない慢性的な状況のように思えることがある。
米国と中国は、1950年代にも台湾をめぐってにらみ合っていた。筆者は1995年の台湾海峡危機について英エコノミスト誌に特集記事を書いている。
そのため、中国が台湾沖で行っている脅迫めいた軍事演習については、昔から続いている長い物語の新しい章にすぎないと考えたくもなる。
過去の台湾海峡危機とは違う
だが、今回はどこか違うように感じる。
台湾をめぐる米中の戦争は、昔はリアルな可能性のように思われたが、それ以上のものではなかった。
ところが今日では、米中紛争は単にあり得るだけでなく、恐らく起こると考える専門家が増えている。
英国際戦略研究所(IISS)のアジア・ディレクター、ジェイムズ・クラブツリー氏は「今の流れで行くと、今後10年の間に、米国と中国は恐らく何らかの軍事紛争に至るように思える」と話している。
西側諸国の政府高官は用心深いため、そんなことは公の場では決して言わない。だが、多くの人は内々にクラブツリー氏と同じ悲観的な見方をしている。
米国の考え方が垣間見えたのは2021年のことだった。
退任間近の米インド太平洋司令官フィリップ・デービッドソン氏が連邦議会の公聴会に出席し、「今後6年以内に」中国が台湾に侵攻する「明らか」な脅威があると述べた時のことだ。
確かに、中国政府の言葉の使い方は国家主義的で好戦的だ。