FBIが家宅捜査に入ったトランプ氏の私邸「マー・ア・ラゴ」(2012年9月撮影、写真:ロイター/アフロ)

トランプ:米国は暗黒時代に入った

 48年前、弾劾を逃れたものの逃げ場を失ったリチャード・ニクソン第37代大統領が辞任した8月8日。

 この日の早朝、「泣く子も黙るFBI(米連邦捜査局)」の捜査官約30人が前大統領の私邸を家宅捜索した。

 2度にわたって弾劾を逃れ、いまだに「第45代大統領」の肩書で政治活動を続けてきたドナルド・トランプ氏のフロリダの別邸「マー・ア・ラゴ」に、だ。

 相手は前大統領。FBIが動くにあたってはメリック・ガーランド司法長官の最終決定を経て、ワシントンの連邦地裁判事が許可を与えなければできない。

 しかも限りなく「黒い容疑」(この場合、トランプ氏が自宅に機密文書を隠匿しているという確かな証拠があったに違いない)があるとの確証がなければ、FBIは家宅捜索はしない。

 FBIがマフィアのボスの家を家宅捜査するならいざ知らず、大統領経験者の私邸を抜き打ちで家宅捜査するのは、米史上前代未聞だった。

 トランプ氏はニューヨークのトランプ・タワーに滞在していて留守だった。

 複数の米メディアによると、トランプ氏が退任しホワイトハウスを去る際に在任中の機密文書をダンボール箱15箱に入れてマー・ア・ラゴに持ち運んだとされる。

 FBIはその疑惑を調べるために家宅捜査に踏み切ったのだ。

 退任した大統領は任期中、記録されたすべての機密文書をワシントンの国立公文書館に提出しなければならない。

 トランプ氏はこの規則を無視し、米議会乱入事件の真相を究明する下院特別委員会の提出要求にも応じていない。