(英フィナンシャル・タイムズ紙 2022年7月30・31日付)

米司法長官メリック・ガーランドはハムレットのような心境に違いない(8月2日撮影、写真:ロイター/アフロ)

 米司法長官のメリック・ガーランドはハムレットのように、行動するべきか否か、いつ行動するべきかについて悶々と悩むことで知られている。

 議会の妨害や暴力の扇動でドナルド・トランプを起訴するよう長官に迫る圧力は、当時大統領だったトランプが2021年1月6日に大統領選での敗北を覆そうとして以来ずっと高まり続けてきた。

「何人も法を超越しない」

 ハムレットとは異なり、ガーランドは胸の内に秘めた考えを独白することはできない。

 だが、元判事は先日、司法省が実際にトランプの刑事捜査を進めているとの報道を認めかけた。

「この国では、何人も法を超越しない」とガーランドは語った。「これ以上はっきりと言うことは不可能だ」。

 ガーランドが背負っている責任は、誇張するのが難しい。

 現職、元職を問わず、連邦犯罪で裁判にかけられた米国大統領は過去に一人もおらず、ましてや有罪判決を受けた人はいない。

 弾劾裁判にかけられるよりは辞任を選んだリチャード・ニクソンは、後任のジェラルド・フォードによってすぐに恩赦された。

 仮にニクソンが訴追されていたとしても、今日のトランプの裁判とは比べものにならない。

 ニクソンとは異なり、トランプは大統領選に再び出馬する資格があり、実際に出馬する意向を示しているからだ。

 トランピズムを拝借するなら、選挙に向かう時期に次期大統領候補を裁判にかけるなどということは「unpresidented」だ。

(編集部注:トランプ前大統領は前代未聞を意味する「unprecedented」のスペルを間違えたとされ、話題になった)