2012年に隠岐諸島沖で救助された北朝鮮の小型船。脱北の際に、海を経由するケースはとても少ない(写真:第8管区海上保安本部/ロイター/アフロ)

(ファンドビルダー:韓国人コラムニスト)

 現在、韓国では2019年11月に起きた脱北漁師強制送還事件の真実が解明されようとしている。16人を殺害したとされる北朝鮮人の漁師2人が漁船で脱北したが、文在寅政権は重大な事件を起こしていることを理由に北朝鮮へ強制送還したという事件である。

 ところが、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は、この脱北者の亡命意思を確認した上に、目隠しされ非武装地域(DMZ)の板門店で北朝鮮に引き渡される映像、動画を公開した。そして、文在寅政権の判断の是非を問う声が韓国内で高まっている。

 朝鮮戦争が休戦した1953年7月27日以降、北朝鮮を脱出して韓国に亡命した北朝鮮住民は2022年現在、約3万5000人に上る。亡命者の大半は1990年代以降に脱北した。1990年代は北朝鮮が国際的に孤立し、大洪水(1995)など災害まで発生し、多くの餓死者まで発生し始めた時だ。

 このため、北朝鮮住民の脱北が本格化し、毎年平均数十人から数百人ほどが韓国に亡命した。そして、2001年を基点に韓国に亡命する北朝鮮住民が1000人を超える爆発的な増加傾向を見せた。

 2001年の1043人を皮切りに2019年の1047人に至るまで、19年間、計3万2425人の北朝鮮住民が韓国に亡命した。毎年平均1706人で、ピークを記録した2009年には2914人が亡命した。

 しかし最近は、新型コロナウイルス感染症による国境封鎖の余波で脱北することが非常に難しくなった。これにより、韓国への亡命者は2020年に229人、2021年に63人に急減した。2022年は7月現在、11人に過ぎない。

 これまで亡命した北朝鮮住民約3万5000人は、どのような方法で韓国に到着したのだろうか。

 中国や東南アジアなどの北朝鮮食堂に勤務する途中で亡命したり、北朝鮮外交官や留学生の身分で海外滞在する途中で亡命したりするケースはごく少数に過ぎない。朝鮮半島の休戦線を突破して亡命するケースもごく少数だ。

 ほとんどは、第三国経由である。その中でも、「北朝鮮→中国→ラオス(ミャンマー)→タイ→韓国」へと続くコースが代表的だ。モンゴルやベトナム、カンボジアを経由する場合もある。