(英フィナンシャル・タイムズ紙 2022年7月22日付)

英国ではなぜ労働者が戻って来ないのか(写真はロンドン)

 ロシア皇帝のニコライ1世は1853年にオスマン帝国を「欧州の病人」と呼んだとされており、この表現はそれ以来「没落」のメタファー(暗喩)となっている。

 ところが2022年の英国にとっては、これが英国特有と見られる根源的な問題の正確な診断になる。

 新型コロナウイルスの感染拡大の波が繰り返し襲来し、それに伴う社会・経済活動の制限が繰り返されるようになって1年が過ぎた頃には、英国でも米国でも欧州連合(EU)でも、さらにはオセアニア諸国においても、労働市場からの大量脱出が鮮明になっていた。

 感染症から立ち直るために、身体の弱い親類や学校が休みになった子供たちの世話をするために、あるいは早期退職を選択して、数百万人が働くのをやめた。

英国以外はコロナ前のトレンドを回復

 このため、今日の英国の労働力が2019年暮れのそれより小規模であることに驚きはない。

 だが、その点において英国が非常に例外的であることと、その原因が何であるかは、これまで明らかではなかった。

 ほかの国々では人々が労働市場から素早く退出し、それと同じくらい素早く戻ってきた。

 例えばEUでは、2020年夏までに580万人の労働者が市場からいなくなったが、2021年終盤には不就労率(編集部注:15歳以上人口に占める、就業していないまたは就業の意思がない人の割合)がパンデミック以前のトレンドに戻っていた。

 経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国では、1カ国を除くすべての国が2022年第1四半期までに労働力の回復が完了したか、回復に向けた軌道に乗っていた。

 英国は違う。残る37カ国で不就労率が上がったり下がったりする一方、英国だけは一貫して上昇した。

 また先進国では珍しいことに、就業も求職活動もしていない労働年齢の英国人の数は2019年末からほぼ毎四半期増加しており、パンデミック以降では2022年第1四半期が最も多くなっている。