ニューヨークで始まったサル痘のワクチン接種(写真:Abaca/アフロ)

(ステラ・メディックス代表、獣医師/ジャーナリスト 星 良孝)

 天然痘に似たサル痘と呼ばれる感染症が欧州、北米、中南米、中東、アジア、オセアニアに至る世界各地で感染者を増やしている。

 7月22日までに、世界のサル痘の感染者は1万6000人を超えた。米国やオランダでは、子どもへの感染も初めて確認されている。

 7月23日(現地時間)には、世界に拡大するサル痘の状況を受け、世界保健機関(WHO)はサル痘を「PHEIC(フェイク)」と呼ばれる国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態に該当する宣言を出した。名実ともにサル痘は新型コロナウイルスに続く世界の脅威として認識されたのだ。

 コロナと比べれば感染者の人数は圧倒的に少なく、もとの流行国であるアフリカを除くと、欧米をはじめ新たに流行している国々で死亡者も出ていない。だが、感染者の増加ペースを座視することはできない。

 世界では、6~7月にかけて感染者が倍増を超える伸びを見せた。米国では18倍という増加だ。感染の拡大を抑え込むべく、米国では今年中に160万回分のワクチンを配備すると発表した。欧州でもワクチンメーカーが欧州に150万回分のワクチンを供給すると明らかにしている。

 筆者は獣医師資格を持つ立場として、5月以降、論文や公的機関の情報などを追いながらサル痘の情報発信を続けてきた。既に指摘されているが、サル痘の感染拡大は男性同性愛者の中で起きている。

 その解決には、男性同性愛者の行動様式に対する深い理解が欠かせない。裏を返せば、現在のサル痘の難しさは、感染の中心にある男性同性愛者の行動様式がブラックボックスにあることとも関係している。

【解説、ベルリンに感染者が多い理由】(https://youtu.be/aCXFDqdNuPc

 サル痘拡大の背景にはさまざまな要素があるが、その背景の一つには、時価総額1000億円を超えるユニコーン企業をも生み出した“出会い”の変容があるようだ。世界で月1100万人が利用する大規模アプリが登場するなど、男性同性愛者の変化の先に、サル痘の拡大があると考えていい。

 ここでは論文や男性同性愛者からの情報に基づき、異様な拡大をしているサル痘の課題や、これからの解決策を考察する。