(英フィナンシャル・タイムズ紙 2022年7月11日付)

今年5月26日、テキサス州ウバルデで起きた銃乱射事件では20人もの学童や教師が犠牲になった(写真:ロイター/アフロ)

 筆者は以前、ドナルド・トランプ氏が米国大統領に選出された後、米国がいつの日か別々の州に分裂すると予想した同僚たちを笑い飛ばしていた。もう笑っていない。

 過去数週間に米最高裁が下した裁定によって、何年も前から徐々に広がっていた米国の亀裂が深まった。

 こうした亀裂はトランプ氏の大統領選出とそれに対するプログレッシブ(進歩派)の反発だけに根差しているわけではない。

 その根っこは2008年の金融危機までたどることができる。

最高裁判決でさらに深まる亀裂

 危機以降、共和党、民主党双方が下してきた政策決定(住宅保有者ではなく銀行を救済したことや法人税の大幅減税などを含む措置)は米国の機関に対する信頼を損ない、米ギャラップによると、今では信頼度が過去最低に落ち込んでいる。

 最高裁の判決、なかでも特に「ロウ対ウェイド」裁判で認められた人工妊娠中絶の権利を覆した判断と、国レベルで行動する連邦政府機関の能力に新たに加えられた制限は、米国をさらに弱め、さらに分裂させる。

 これが自然な限界まで達すると、市民のみならず投資家にとっても重要で基本的な問題について連邦政府が全米で単一の法の支配を保証することが不可能になる。

 ここで筆者が話しているのは、企業の規制と業績開示の基準、労働・環境関連の規則、様々な消費者保護、さらには、どのような種類の資産の売買が許されるか許されないかといった問題だ。

 米環境保護局(EPA)や、恐らくより重要なところで米証券取引委員会(SEC)のような連邦機関が規制しているすべてのことを思い浮かべてみればいい。

 どの州に住んでいるかによって、こうした規則の適法性と執行が米国各地で再交渉の対象になっている。