AIをものづくり企業へ、いかに導入するか。パナソニックは、これまで自社で取り組んできたAI技術の獲得や人材育成の考え方を「DAICC」としてパッケージ化している。AIという「道具」をそろえ、それを活用する「大工」を増やすための知恵とはどのようなものだろうか。また、ものづくり企業にとっては、導入したAIを組織に定着させ、持続的に業務に応用していくことがより重要になる。そのベストプロセスとは何か、本稿で詳細に解説する。

※本コンテンツは、2022年4月18日に開催されたJBpress/JDIR主催「第5回 ものづくりイノベーション」の特別講演Ⅰ「パナソニックのAI活用 - 技術導入・人材育成から『AIエンジニアリング』へ」の内容を採録したものです。

AI活用で力点を置くべき要素は「データ」と「ドメイン知識」

 パナソニックは、自社のAI活用のコンセプトを「DAICC(ダイク)」と名付けている。この言葉は「Data & AI for Co-Creation」の略であるとともに、「私たち(パナソニック)は大工である」という意味を含んでいる。パナソニック ホールディングス テクノロジー本部デジタル・AI技術センター所長の九津見洋氏は、「AIはあくまで必要な道具であり、私たちは道具を使いこなして目的を達成する集団、いわば大工のような存在であるということです」と説明する。

 上の図はAI活用の4要素だ。左から、AIのモデルを作り出すために必要な「計算資源(Compute)」、AIモデルの”作り方”である「アルゴリズム(Algorithms)」、実業から得られる「データ(Unique Data)」、そして問題領域に関する深い知識や経験を指す「ドメイン知識(Domain Expertise)」。AIのシステムは、これらがかみ合って成立している。

 しかし、左の2要素は進化が早く、急速にコモディティー化が進む。要するに、次々に新しいものが世に出て、すぐに陳腐化するとともに簡単に手に入るようになるということだ。一方、右の2要素は、実際のビジネスを営んでいるからこそ得られるデータであり、積み上げられる専門知識を指す。このデータとドメイン知識は、企業の強みとも言い換えられる。

「コンピュート、アルゴリズムは、道具であると割り切って、自分たちに必要なものをどうそろえるかを考えます。その一方で、自分たちでなければ入手できないデータをどう集めるか、自分たちにしかないノウハウであるドメイン知識をどう活かすのか。AI活用に当たっては、後者に大きく力点を置くべきだと考えています」