文=福留亮司

パテックフィリップの定番中の定番である『カラトラバ』の新作は、装飾の技術がいかんなく発揮されたヴィンテージ感ある一本。定番モデルの新たな可能性を感じるモデルに仕上げられている。

『カラトラバ Ref.5226』
自動巻き(Cal.26-330 S C)、18Kホワイトゴールドケース、40㎜径、493万9000円

品質をなによりも重視

 時計界において、最高峰の名を欲しいままにしているパテック フィリップ。創業当時から品質をなによりも重視しており、創業間もない19世紀半ばには、現在は一般化しているリューズによる巻き上げ、時刻合わせという機構をすでに開発しており、さらに超複雑機構といわれるミニッツリピーターも製作していた。

 近年は、多岐にわたる検査をクリアした機械式時計だけに与えられる品質保証「ジュネーブ・シール」をすべての製品が取得していたことでも知られている。認証を受けた全製品のうち、95%以上がパテック フィリップのものであったというのだから圧倒的なクォリティである。現在は、あえて検査規準を引き上げた、独自の認証マーク「パテック フィリップ・シール」を設立し、いままで以上に厳しい姿勢で時計づくりを行っている。

 そんなパテック フィリップにおけるフラッグシップで、現在も定番モデルとして揺るぎのない人気を博しているのが『カラトラバ』である。

『カラトラバ』は1932年に誕生したドレスウォッチのコレクションで、「機能がフォルムを決定する」という20世紀初頭のドイツ・バウハウス哲学の影響を強く受けている。

 無駄のないシンプルな文字盤デザインはディテールも美しく、それらすべてが完璧なバランスで形成されているのだ。それは「ラウンドモデルの規範」といわれるほどである。

 また、剣と4つの百合の花を組み合わせた「カラトラバ十字」はパテックフィリップのエンブレムだが、その名前がコレクションネームとなっていることでも、いかに『カラトラバ』が特別であるか、がようくわかるのである。

ゴールド製のローターに刻印されたカラトラバ十字