(英フィナンシャル・タイムズ紙 2022年6月14日付)

ベトナム戦争の初期に、リンドン・ジョンソン大統領はある米軍最高司令官に対し、「目的を果たす」ためには何が必要かと尋ねた。
役に立たない返答は、目的の定義は何かと聞き返すことだった。
のちのホワイトハウスの報告書は、ベトナムでの勝利は「ベトコンが絶対に勝てないことを思い知らせること」と定義していた。
勝利とは「負けないこと」?
そして今、ロシアとの戦争でウクライナを支援するなか、西側の大国は再び、勝利を「負けないこと」と定義する誘惑に駆られている。
ウクライナの人々は、戦闘を続けるには何とか足りるが、ロシアを倒すには不十分な支援しか与えられないことを危惧している。
各地で都市が破壊され、ロシアの進軍を食い止めるために戦うウクライナ軍が1日に数百人の兵士を失っている時に、これは厳しい見通しだ。
ジョー・バイデン大統領が記した最近の寄稿は米国の最大の目標を、自由で独立したウクライナを守ることと定義している。
一方、ドイツのオラフ・ショルツ首相は何度もロシアが勝ってはならないと述べたが、ウクライナが勝利を収めなければならないとは言ったことがない。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領のある報道官は匿名でのブリーフィングで、フランスはウクライナの勝利を望んでいると述べたが、大統領自身はまだ、こうした言葉を口にしたことがない。
対照的に、英国のボリス・ジョンソン首相は単刀直入に「ウクライナは勝たなければならない」と述べた。
また、エストニアのカヤ・カラス首相は「何らかの和平合意ではなく、勝利が目標でなければならない」と語っている。