(英フィナンシャル・タイムズ紙 2022年6月6日付)

米国株は5月に崖っぷちから引き返した。
崖っぷちとは、弱気相場の定義である20%下落の節目のことだ。多くの人は今、年初来の株価の動きとしては1970年以来最悪の下げとなっているこのドラマがどう終わるのかに思いを巡らせている。
筆者は、これがただの幕間に過ぎず、次の章はもう一段の相場下落をもたらすと見ている。
過去のパターンがこの展開を示唆している。
1926年までさかのぼるS&P500株価指数の記録は、合計で15回の弱気相場があったことを示しており、17カ月間での下げ幅の中央値は34%となっている。
こうしたケースの75%近く(15回の弱気相場のうち11回)で、相場が高値から15~20%下げたところで売りが顕著に中断し、再び大底に向かい始める前に、いったん多少の下げを埋めている。
大雑把に描いたこの歴史は、5月の反発が弱気相場の幕間だったことを示唆している。
一つの時代の終わり
同じ方向を指し示している要因はほかにもある。
一時は2ケタに迫った最近の反発の大きさは、過去の弱気相場の休止段階とおおむね合致しており、それゆえ必ずしも下げ相場が終わったことを示す兆しではない。
一時的な休止によって中断された11回の弱気相場では、休止期間の中央値は4カ月間だった。
さらに、今回は米連邦準備理事会(FRB)が市場の救済に駆けつける見込みがない。金利がまだインフレ率を大きく下回っている状況では期待できない。
今年の相場下落の引き金を引いたのは、FRBの金融引き締めというお決まりの要因にとどまらない。
引き金はむしろ、この引き締めが一つの時代の終わりを告げるという認識だった。