(英フィナンシャル・タイムズ紙 2022年6月10日付)

米下院特別委員会の公聴会で副委員長として進行役を務めるリズ・チェイニー氏。左は委員長のベニー・トンプソン氏(6月9日、写真:ロイター/アフロ)

 米国のテレビ局はこぞって高齢の君主の在位70年を祝う式典を生中継したが、自国の民主主義への攻撃をめぐって開催される公聴会については対応が分かれた。

 これは一体、どう理解するべきなのか。

 楽観的な解釈は、米国においても英国の女王は政治を超越した存在だということだ。

 逆に悲観的に解釈するなら、今では米国の民主主義の存廃そのものが党派的な問題になったということだ。

 9日を皮切りにテレビ中継される「1月6日特別委員会」は、1974年にリチャード・ニクソンを大統領辞任に至らしめたウォーターゲート事件の公聴会をまねようとしている。

 しかし今のところ、目立つのは両者の差異の方だ。

 ウォーターゲートの公聴会は、米国のあらゆるテレビネットワークが生中継した。中継は数カ月間続き、米国民のほぼ4分の3が視聴した。

 片やニクソンの時代には存在していなかったフォックス・ニュースは今回、下院特別委員会の公聴会を放送しない方針を明らかにした。

50年間で様変わりした米国社会

 ちょうど50年前に起きたウォーターゲート事件から2021年1月6日の米連邦議会襲撃事件までの道のりは、社会がいかに大きく変わったかを表している。

 ウォーターゲート事件について調査を始めるか否かが連邦議会上院に諮られた時、ニクソンは地滑り的な勝利で再選を果たしたばかりだった(大統領選挙での得票率61%は共和党史上最高だった)。

 それでも上院は調査開始を満場一致で承認した。

 共和党員も誰一人として反対しなかった。大統領が「悪者」かもしれないとの疑惑はあまりに深刻で、通常の政治案件として扱うことはできなかったのだ。