バブル世代は人生100年時代のおじさんのロールモデルになれるか(提供:アフロ)

「あれ、こんなところでおじさんが働いてる……」

 近年、非正規労働の現場で、しばしば「おじさん」を見かける。しかも、いわゆるホワイトカラーの会社員が、派遣やアルバイトをしているケースが目につくようになった。

 45歳定年制、ジョブ型雇用、そしてコロナ──。中高年男性を取り巻く雇用状況が厳しさを増す中、副業を始めるおじさんたちの、逞しくもどこか悲壮感の漂う姿をリポートする連載の番外編。

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(若月 澪子:フリーライター)

副業で苦戦するバブル世代

 筆者は今、ソバージュヘア・Tシャツ姿のうさんくさい中年男性とZoom(ズーム)で会話している。彼は私の原稿をチェックしている編集者のS氏(40代)。話題は「なぜ、50代の中高年男性が副業探しで苦戦するのか」についてだ。

 筆者はこれまで副業をしている、主に50代のおじさんに「どんな副業をしているのか」「どんな副業をしたいか」など話を聞いてきた。

 その結果、元テレビプロデューサーが運送会社の倉庫でバイトしていたり、大手製薬会社の研究員が1日3000円もらえるナゾの薄毛クリニックのモニターをやっていたり、大手メーカー勤務のおじさんが1枚1円のポスティングをしていたりと、自らのキャリアに見合った副業になかなか出会えない現状を目にしてきた。

 一応断っておくが、これらの中高年男性たちは、資格を多数保有し、TOEICスコアも高く、パソコンのツールも問題なく使えるような、勉強熱心で真面目な人が多い。50代男性の中には職場の若い人から「働かないおじさん」とか「妖精」とか言われて迫害されている人もいるかもしれないが、話を聞かせてくれた人たちは比較的「意識高い系」のおじさんだった。

 そんな人でも副業で月に数万円稼ぐことは想像以上に難しいことのようで、さらに「自分のスキルを活かして、コンサルや人の役に立つ仕事をしたい……」などというスケベ心を出してしまうと、一蹴されるという結果になっている。

 50代おじさんは役職定年が近づき、現在の職場以外に新たなステージを模索することが喫緊の課題だ。副業探しは、実は「セカンドステージ探し」なのだ。

 定年が延び、今の会社で65歳くらいまで働き続けることができる人もいるものの、それは温情残留にすぎない。身分は格下になり、収入もガクンと下がる。いや、会社に残れるのはまだましな方で、40歳を過ぎてから早期退職を勧告された経験が一度や二度でない人も多いはずだ。

 今の会社以外に、自分のやりがいや生きがい、さらに多少のお金をもたらしてくれる場所が欲しい。しかし、おじさんに与えられるのは、肉体系・単純系のアルバイトばかり。

「理想の副業が見つからないのは、やっぱり本気度が足りないんじゃないんですかね」と、ソバージュヘアをかき上げるS氏。

 S氏は大手メディアを辞めて独立。最近は遊廓やイタコをテーマにした写真集を出版するなど、とても自由に活動している。