(英フィナンシャル・タイムズ紙 2022年5月24日付)

嘘をつくことにここまで慣れ親しんでしまった人物はいない(5月26日、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 ウラジーミル・プーチンは西側陣営にあだ名をつけている。「嘘の帝国」というのがそれだ。

 ロシア大統領がウクライナでの「特別軍事作戦」を発表した時には、西側がコソボやイラク、リビアなどで二枚舌を使ってきたことへの怒りが言葉の端々に散りばめられていた。

 プーチンの怒りには嘘偽りがない。政治評論家のイワン・クラステフが言うように、プーチンは「西側の偽善のことが頭から離れなくなっている」。

プーチンが執着する西側の偽善

 だが、偽善と嘘は必ずしも同じではない。

 両者の違いは意味論的なものに、それこそ取るに足らないもののように思えるかもしれないが、見過ごすことはできない。

 ロシア政府はあからさまな嘘を得意とする。

 ロシアはウクライナを侵略していない、野党指導者アレクセイ・ナワリヌイに毒を盛っていない、(2019年11月の)マレーシア航空MH17便の撃墜に一切関与していない、またロシア軍は戦争犯罪に手を染めていないと表現を変えながら主張している。

 これとは対照的に、米国とその同盟国は偽善を得意としている。

 西側の典型的な悪癖は、何らかの理想や政策を標榜しながら、それを一律には適用しないことだ。

 このため欧米諸国は人権の擁護者を名乗りながら、サウジアラビアへの武器売却を競っている。