ポーランド・ドイツ国境付近のマルノウにあるロシア産天然ガスのコンプレッサーステーション(2022年4月22日、写真:picture alliance/アフロ)

 欧州連合(EU)がロシアへの化石燃料依存からの脱却を目指し、新たに2100億ユーロ(28兆5000億円)という巨額投資を行う方針を明らかにした。資金の多くは再生可能エネルギーに投じられるが、2027年までにロシア依存から完全脱却するという目標を達成するのは現実的にかなり難しいだろう。(加谷 珪一:経済評論家)

このタイミングで大胆な脱ロシア方針を打ち出した理由

 ロシアのウクライナ侵攻によって、欧州経済がロシアの化石燃料に依存していることが、あらためて浮き彫りになった。欧州は年間で10億バレルの原油をロシアから輸入しているが、これは欧州全体の原油輸入量の3割近くに達する(2020年時点)。現在原油価格は1バレルあたり110ドル前後なので、金額換算すると1100億ドル(約14兆円3000億円)にもなる。

 同様に欧州はロシアから天然ガスも輸入している。欧州がロシアからパイプライン経由で輸入する天然ガスは年間1680億立方メートルで、LNG(液化天然ガス)も含めた全体の輸入量(3260億立方メートル)の約半分がロシア産である。

 2020年時点での取引価格を基準にすると、欧州はロシアから約180億ドル(2兆3000億円)の天然ガスを輸入している計算になる。天然ガス価格は安価な長期契約と割高なスポット価格に大別され、スポット価格は2020年との比較では5倍近くに値上がりしているので、今年は上記をはるかに上回る金額を欧州はロシアに支払っているはずだ。