(英フィナンシャル・タイムズ紙 2022年4月29日付)

ウラジーミル・プーチンが核兵器の使用をちらつかせて威嚇するのを厭わないことは、ある意味では良い兆候だ。
ロシアが恐らくウクライナで負けていることを意味するからだ。
壊滅的な兆候である可能性もある。もしプーチンの狙いが西側陣営を怖がらせることにあるのなら、その企みは失敗している。
北大西洋条約機構(NATO)はウクライナへの物資補給を段階的に増強し続けている。問題は、ロシアの敗北は避けられないとプーチンが考えた場合にどんな行動に出るか、だ。
プーチンは、どんな手を打つか正確に理解していると匂わせ続けている。ハッタリをかけているのだろうか。
これについては本人でさえ答えが分かっていないこともあり得る。
キューバ危機以来、最も危険な時期に突入
いずれにしても、もう取り返しのつかないことが起きた。
プーチンは核兵器の使用をちらつかせることでキューバ危機以後のタブーを犯した。それだけでも、我々はもう新たな領域に足を踏み入れたことになる。
大半の人が気づかぬうちに、世界は今、1962年のキューバ・ミサイル危機以降で最も危険な時期に入りつつある。
50歳未満の人の大多数は、核の亡霊は前世紀の遺物だと思いながら育った。
ここ数週間で、核ミサイルの撃ち合いの見通しが、今世紀の平和を揺るがす最新の脅威になっている。