中国・四川省の有名中学での入試風景(写真:アフロ)

(加藤勇樹:香港企業Find Asia 企業コンサルタント)

 中国教育部の発表によると、2022年の大学および大専(日本の専門学校に相当)を卒業する「高等人材」の数は、とうとう1000万人を超えました(http://www.moe.gov.cn/fbh/live/2021/53931/mtbd/202112/t20211229_591046.html)。2021年と比較して10%近くも増加しました。

 このような「大卒生の大量生産」がある一方で、大学受験に大きな壁のある人びともいます。その差が生まれるのは、中学校を卒業する15歳のときです。「人生の岐路」とも言える2つの進路がある、中国の教育制度の現状をお伝えします。

中学卒業で進路が大きく分岐

 中国の教育制度は、小学校が6年、中学校(中国での名称は「初中」)が3年で、ここまでは日本と同じです。

 相違が出るのは、中学校卒業時に行われる「初中学业水平考试(中考)」という学力測定の考査で、これはその後の進路が2つに分かれていく重要なものです。進路は「普通科高校(高中)」、と実践的な職業教育が施される「中等职业学校(中職)」の2つです。どちらも3年間です。

「高中」を卒業すると多くの場合、大学入試である「高考」を受け、大学または大専(専門学校)に進学します。一方、「中職」の次の段階としては「高等职业学校(高職)」が設けられており、より高度な職業知識を学びます。

「高中」と「中職」の大きな違いは、大学受験資格の有無です。「高中」では卒業資格を満たすことで「高考」に参加できるのに対し、「中職」卒業生は改めて高中相当の学力証明試験などを受験する必要があります。このため、中職から大学への進学はハードルが高くなっています。

中学の教育制度では中学校卒業の段階で、進路が大きく2つに分かれる(筆者作成)

 つまり、「大学は限られたエリート人材が学ぶ場所」「職業学校は技能人材が学ぶ場所」という位置付けがはっきりしていて、その分岐点が中学校卒業(中考)なのです。この教育制度は1980年代に成立し、現在まで続いています。