閉店したスターバックス。Zマークのシールには「あばよ!」と書かれている(写真は筆者)

5つの「ありがち」フレーズ

 ここ2か月、日本発のロシアに関するニュースやコメントでよく使われているが、ロシア暮らし9年目でロシア社会を取材してきた筆者にとっては、違和感があるフレーズがある。

「対露制裁を強めれば、国民が立ち上がり政権崩壊につながる」

「ロシア人が苦しむのは自己責任」

「若者は反政府、高齢者は親政府」

「情報統制が厳しく正しい情報が伝わっていない」

「ロシアはありえない国」

 この5つだ。本来のロシアの姿が「ロシアA」であるとするなら、上記5つの要素が合わさってニュースに登場することによって、日本人の中に「ロシアB」という、実態とズレたイメージが形成されているような気がする。

 そのせいで、日本人が「ロシアB」を懲らしめて反省させるにはどうすればいいか考えている時に、肝心の「ロシアA」は痛くも痒くもない、ということになる。

 ロシアAにおける価値観や世界観は、一般的な日本人のそれとはだいぶ違っている。それを順番に説明していきたい。

 まず「対露制裁を強めれば国民が立ち上がる」説は、真逆の結果になる。

「ロシアB」という虚像を見ている人々のロジックは、制裁する→市民が生活に困る→制裁の原因を作った政府にノーを突きつける→政権打倒、ということだろう。

 しかしリベラルな政治思想をもち欧米や日本のものが大好きというロシア人でさえ、「それはない」と断言する。

 国民が本当に生活に困るレベルになれば、怒りの矛先は普段の政治信条に関係なく、制裁をしている欧米や日本へと向く。

 一般的日本人のあなたは「そんなバカな。だってそもそもの原因を作ったのはロシアでしょ」と突っ込むだろう。しかしロシアAの世界では、そういう発想はまずわいてこない。