(英フィナンシャル・タイムズ紙 2022年4月20日付)

有権者の耳に聞こえているのは一つひとつの音ではなく、それが組み合わさった和音だ。
一つひとつは高い支持率を得ている政策であっても、一度に数多く聞かされると分別がないように、下手をすれば過激に響いてしまいかねない。
米国民は道路の改修、医療費の引き下げ、気候変動抑制への投資増額を望んでいる。高所得者層への増税でこれらのプロジェクトの費用を捻出するという考えすら良いとしている。
ところが、上記の政策のすべてをほぼ同時期に打ち出したジョー・バイデン大統領の支持率はどん底まで落ち込んでいる。
民主党が今年11月の中間選挙での敗北を覚悟するなか、唯一の期待は、ライバルの共和党が同じようにやり過ぎてしまうことだ。
過激さを増すレトリック
分かりにくいアイデンティティー理論や警察予算の削減に反対している限り、「文化戦争」として通用する戦いで共和党は勝利を収める。
(ウクライナ国民が東ではなく西を向く権利の対価として血を流し始めて以来、この文化戦争というフレーズからは偏狭さが感じられるようになった)
だが、共和党はここで止まらない。
フロリダ州は、学校で性的指向やジェンダーについて教えることに制限を加えた。テキサス州は、メキシコからやってくるトラックの積み荷検査を厳格化し、大混乱を引き起こしている。
優れた作家ではあるが上院議員候補としてはそうでもないJ・D・バンス氏は「子供のいない左翼」を嘲笑した。
また、共和党ではジョージア州知事選挙の候補者として2人の右派の名前が取りざたされている。