「テレグラム」と「ツイッター」ロゴ(写真:當舎慎悟/アフロ)

 ウクライナ政府が「インターネット軍」を組織しており、西側諸国の企業にロシアとの関係を断つよう圧力をかけていると米ウォール・ストリート・ジャーナルが4月19日に報じた

ボランティア30万人参加の情報戦、1日1億人が閲覧

 ウクライナのデジタル転換省がつくったインターネット軍と呼ばれる組織は、同国のネット情報戦を支援する有志で構成され、SNS(交流サイト)などを駆使して不特定多数の人に情報発信している。

 同国のフョードロフ副首相兼デジタル転換相によると、これまでボランティア約30万人が参加し、世界で1日当たり約1億人のネット利用者が投稿を閲覧している。その活動には、ロシアで事業活動を継続している西側企業を名指しし、事業停止するよう呼びかけるものもあるという。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、同省は欧米の大手企業数十社に圧力をかけるように参加者に指示を出している。具体的にはロシア発の対話アプリ「テレグラム」のチャンネル機能を通じ、SNS投稿用のサンプル文章を提供している。参加者はこれを利用して、ツイッターなどの自身のアカウントにメッセージを投稿する。

 最近では、医薬・日用品の米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)がターゲットとなった。2022年3月11日に、ウクライナ人とみられる女性が「我が国に血なまぐさい戦争をしかけているロシア軍に資金を提供しないよう強く要請します。侵略国に協力するのはやめて。自社の立場を示しロシア市場を放棄してください」と、J&Jのアカウントをタグ付けして投稿した

 J&Jは22年3月29日に、ロシアでパーソナルケア製品の販売を停止したと発表したが、医薬品と医療機器の販売は続けるとした。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、米ハンバーガーチェーン大手のマクドナルドもインターネット軍のターゲットになった。マクドナルドは22年3月8日、「ウクライナの罪のない人々に言い表せない苦しみを引き起こしている」として、ロシア国内の約850店舗の一時閉鎖を発表した。

 この活動のターゲットとなった多くの西側企業が、ロシアからの撤退、あるいは事業の一時停止、販売中止を明らかにしている。その理由として企業は、制裁の中で事業を継続することの難しさや、従業員の安全確保などを挙げて様々に説明したが、背景にSNSからの圧力があったと説明した企業は1社もなかった。