ロシアのウクライナ侵攻に伴う経済制裁が注目を集めている。デジタル時代の経済制裁の特徴について、元日銀局長の山岡浩巳氏が解説する。連載「ポストコロナのIT・未来予想図」の第79回。

 ウクライナ侵攻に伴うロシアへの経済制裁が注目を集めています。経済制裁は、他国への侵略など、容認できない行動をとる国に経済的なダメージを与えることで、対象国の翻意を促すとともに、事態の拡散や同様の事態の再発を防ぐことを狙うものです。

経済制裁のメカニズム

 経済制裁自体は、ナポレオンの「大陸封鎖令」のように、かねてから使われてきた手段です。その方法として、かつては「モノ」の流れを断つ方法が主にとられました。対象国に重要な物資を売らないことでその物資を欠乏させたり、その国の主要な輸出品を買わないことで輸出収入を減らすことを狙うわけです。

 経済学は、協力と分業が双方に利益をもたらすと説いています。したがって、経済制裁による協力関係の切断は必然的に、制裁側にも不利益をもたらす「両刃の剣」となります。また、制裁に加わる国々が一部にとどまる場合、制裁対象国は他国との間でモノを売ったり買ったりできるため、制裁自体が効きにくくなります。さらに、経済制裁が効果を挙げるには、ある程度の時間がかかるのが普通です。

デジタル時代の金融制裁

 今回の対ロシア制裁でも、このような経済制裁の基本的な性質は分析の枠組みとして引き続き有効ですが、同時に、以下のような新たな特徴もみられます。