(英フィナンシャル・タイムズ紙 2022年3月30日付)

今年1月末時点で、ロシアは4690億ドル相当の外貨準備を持っていた。
これは1998年の国債デフォルト(債務不履行)の反省を踏まえた倹約の成果であり、ウラジーミル・プーチンはこれで金融面の独立性が保証されると期待した。
だが、ウクライナで「特殊軍事作戦」が始まると、その半分以上が凍結されたことを知った。敵国の通貨が利用できないカネになってしまったのだ。
この凍結はロシアにとって一大事であるだけではない。グローバル化が最も進んだ通貨の一群が、特定の相手に限って非貨幣化されたことの意味は重い。
通貨は公共財だ。
グローバル通貨――国境をまたぐ取引や投資の決断において人々が頼りにする通貨のこと――はグローバルな公共財だ。
だが、その公共財を供給するのは国家の中央政府だ。
昔の金為替本位制度の下でさえ、そうだった。1971年以降の法定不換紙幣の時代においては、より鮮明にそうなっている。
2021年第3四半期には、世界全体の外貨準備の59%が米ドル建てで、20%がユーロ、6%が日本円、5%が英ポンド建てだった。中国人民元のシェアはまだ3%弱だ。
現在、米国とその同盟国(小国も含む)がグローバル通貨を発行していることになる。