チェルシーFCのオーナーでロシアを代表する「オリガルヒ」のひとり、ロマン・アブラモビッチ氏(写真:AP/アフロ)

(在ロンドン国際ジャーナリスト・木村正人)

[ロンドン発]ロシアのウラジーミル・プーチン大統領によるウクライナ侵攻に対し、英政府は3月10日、クレムリンと密接な関係を持つチェルシーFCオーナー、ロマン・アブラモビッチ氏や「アルミ王」オレグ・デリパスカ氏らロシア人オリガルヒ(新興財閥)7人に資産凍結などの制裁を発動した。対象資産は推定150億ポンド(約2兆4000億円)だ。

 ロシアの石油大手ロスネフチのイーゴリ・セチン最高経営責任者(CEO)、VTBバンクのアンドレイ・コスチンCEO、国営ガス会社ガスプロムのアレクセイ・ミレルCEO、国営パイプライン会社トランスネフチのニコライ・トカレフ社長、ロシア銀行のドミトリー・レベジェフ会長も制裁リストに載せられた。

「オリガルヒはもうイギリスに来ることも収入を使うこともできない」

 ボリス・ジョンソン英首相は下院で「停戦だけでは制裁は解除されない」と厳しい姿勢を見せた。英政府筋は、制裁対象のオリガルヒは3月30日時点で76人、関係する銀行は16行だと数字を挙げて「オリガルヒはもうイギリスに来ることも収入を使うこともできない。活動自体できないのだ」と語気を強めた。制裁対象は個人・団体を合わせて500以上になる。

 これで英政府はロシアの権力者たちに致命的なダメージを与えることができるのだろうか。

 世界の金融都市ロンドンには原油・天然ガス・資源マネーが流れ込み、不正蓄財の温床と批判を浴びてきた。独裁者や怪しげな権力者が国家や国民のおカネを盗み取って私腹を肥やす「盗賊政治」(クレプトクラシー)を追及してきた英調査報道ジャーナリスト、オリバー・ブロウ氏は「新聞の見出しを飾ったが、制裁はいつまで続くのか、真価が問われるのはこれからだ」と慎重な見方を示す。

札束がプリントされたシャツを着て記者会見するジャーナリストのオリバー・ブロウ氏(筆者撮影)