(英フィナンシャル・タイムズ紙 2022年3月12・13日付)

この紛争の間ずっと、ウクライナ人からロシアの一般市民、ウラジーミル・プーチン、欧米人まで、すべての人が頭に描いているものが1つある。
第2次世界大戦がそれだ。
昔ながらの地上侵攻が、史上最大の軍事作戦だった1941年のドイツの侵攻当時と同じ都市を恐怖に陥れている。
家族が爆弾を逃れて地下の駅に避難したり、恐ろしいほどすし詰めの電車に乗り込もうとしたりする光景は、瞬時になじみを覚える。
ロシア軍の戦車や、混乱し、十分に食べていない徴集兵さえ、当時と大して変わっていない。
歴史は繰り返す。最初は悲劇として、そして2度目も悲劇として、だ。
欧米の一部社会が今も第2次世界大戦に取りつかれているとすれば、旧ソ連では、その効果がはるかに大きい。
大戦では、米国と英国の犠牲者が合計で100万人足らず(それでも想像を絶する殺戮)だったのに対し、ソ連では推定2400万人の市民が命を落としている。
では、あの大戦の集団的な記憶は今回の戦争の理解をどう形作るのか。もっと言えば、現在の戦争そのものをどう形作っていくのだろうか。