(英フィナンシャル・タイムズ紙 2022年3月9日付)

悪は存在する。怒りと権力欲に駆られた悪は、クレムリンに鎮座している。そして自由と民主主義を夢見る罪を犯した国に侵攻している。
どうすればこのような悪を打ち倒せるのか。
経済制裁がウクライナ国民による抵抗と相まって、ウラジーミル・プーチンを撤退に追い込めるだろうか。さらには、これがプーチン政権の崩壊につながることもあり得るだろうか。
それとも逆に、プーチンは核兵器を使用するところまでエスカレートするリスクを冒すのか。
強力な経済制裁に動く西側諸国
西側による制裁が強力なことは間違いない。プーチンは制裁を「戦争行為に近い」と形容している。
ロシアは世界の金融システムからほぼ切り離され、外貨準備の半分以上が役に立たなくなった。
西側の企業は評判の悪化やリスクの増大を懸念し、ロシアに関わり続けることを怖がっている。
キャピタル・エコノミクスのチーフエコノミスト、ニール・シアリングは、ロシアの国内総生産(GDP)が8%急減し、その後長い景気低迷が続くと予想している。
中央銀行が政策金利を一気に年20%に引き上げたこと自体も重荷になるだろう。シアリングは楽観的すぎるかもしれない。
米国のバイデン政権が主張しているように、ドイツは反対しているものの、西側が取るべき次の対策がエネルギーの輸出制限であることは明らかだ。
控えめに言っても、プーチンの犯罪によって引き起こされたエネルギー価格の上昇がロシアに犯罪の原資をもたらす事態は好ましくない。
ウクライナのエコノミスト、オレグ・ウステンコは、ロシア産エネルギーのボイコットを強く求めている。