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(英エコノミスト誌 2022年2月26日号)
ウラジーミル・プーチンの大蛇は自縄自縛に陥る恐れもある。
新聞のビジネス欄は大抵、戦争の騒乱ではなく、企業間の熾烈な競争を取り上げる。
だが、ウクライナの国家主権に対するウラジーミル・プーチンの攻撃については、そのど真ん中にとある企業が鎮座している。世界最大のガス生産会社ガスプロムだ。
ロシア政府が過半数の株式を保有するガスプロムは自社の商業的な利益を増やすと同時にクレムリンの利益獲得も促進する芸当を会得している。
その技は、合図があるまで欧州へのガス供給を絞り込むことにも発揮されている。
2月22日にはしっぺ返しを食らった。
ロシアがウクライナに行った戦争挑発行為の報復として、ガスプロム所有の天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」の事業を無期限停止するとドイツが表明したのだ。
そしてその2日後、ロシアはウクライナ侵攻に踏み切った。こうした大きな出来事が2つあっても、ガスプロムは問題を引き起こし、金もうけをやめないかもしれない。
冷戦から生まれた巨大企業のビジネスモデル
ガスプロムを理解するには、同社が1989年に旧ソビエト連邦のガス産業省を母体に作られた冷戦の所産であることを思い出すのが有効だ。
最高経営責任者のアレクセイ・ミレル氏は2001年からずっとその地位にある。プーチン氏が権力を手に入れた翌年のことだ。
この2人はよく似ている。
2018年に米国から制裁を科された時、ミレル氏は「ついに私も制裁の対象になった。我々が万事きちんとやっている証拠だ」と述べた。
目を見張る配当利回りに引かれてガスプロム株を買う西側の投資家は、同社が株主ではなく国家の利益になるプロジェクトに散財していると嘆いている。
世界で2番目に高い超高層ビルをサンクトペテルブルクに建設する計画はその好例だ。
政治と商業の混同については、同社のビジネスモデルは、ロシア国内向けのガス料金を低く抑えるためにパイプライン経由の天然ガス輸出という高採算事業で認められた独占に依存している。
冬になれば何もかも凍り付く土地だけに、プーチン氏にとってこの見返りは貴重だ。