(英フィナンシャル・タイムズ紙 2022年2月25日付)

人通りのなくなったキエフ市内の通りをカラシニコフ銃を手にパトロールするウクライナの女性自警団員(2月27日、写真:AP/アフロ)

 ウクライナのビクトル・ヤヌコビッチ大統領を追い出した2014年のマイダン(独立広場)革命からまだそれほど経っていない日に、とあるロシア人評論家とモスクワで交わした会話が忘れられない。

 彼はまず、クレムリンの標準的な発言をなぞり、ロシアがウクライナを「失った」ことは悲劇だと言った。

 だが、これは内緒の話だとしたうえで、もしロシアが「勝って」いたらもっとひどいことになったかもしれない、と付け加えた。

 大意は次のようなものだった。

 もしロシア政府があの時、ウクライナの傀儡政権を支えることに成功していたら、ロシアは内戦に引きずり込まれた可能性がある。

 ウクライナ西部で反乱と戦い、外国から制裁を受けたかもしれない。

 そんなことになったらロシア側にも死傷者が出ただろうし、富が流出し、その後何年にもわたって国際社会での地位を失っただろう。

 ちょうど1979年のアフガニスタン侵攻がソビエト連邦崩壊につながったように、ウクライナに侵攻していたらウラジーミル・プーチン大統領の政権は危険にさらされていたかもしれない――。

 2月24日朝にそのウクライナ侵攻が始まったことで、このシナリオが現実に近づいた。

すでにグラウンドゼロだったウクライナ

 だが、ロシアによる今回の侵攻は世界のほかの国々にどのような影響を及ぼすのだろうか。

 ロシアの攻撃開始を受け、エネルギー価格はすでに急上昇している。ロシアやベラルーシと国境を接する北大西洋条約機構(NATO)加盟国に脅威が及ぶ恐れもある。

 だが、背筋が寒くなる最も強烈な恐怖の一つに挙げられるのは、地域紛争がサイバースペースにおける目に見えない地球規模の対立にエスカレートしかねないことだろう。