(英エコノミスト誌 2022年2月19日号)

英国では消費者になるべく悟られないようにこっそりと値上げしてきた(写真はロンドン)

英国政府は間もなく運営コストが増えるが、国民に提供するサービスは低下する。

「シュリンクフレーション」は英国の買い物客にとって悩みの種だ。

 製造業者は何年も前から、価格を引き上げる代わりに製品の量をこっそり減らしてきた。

 食べ始めたら止まらないベーコン味のスナック菓子「フラズルズ」のマルチパックは、以前は8袋入りで1ポンド(約156円)だった。それが今では6袋入りになっている。

 キャドバリーの「クリーム・エッグ」も、かつては1パックに半ダース入っていたが、今では5個しか入っていない。

 缶入りのチョコレート「クオリティ・ストリート」は、2009年には1.2キロの重さがあったのに、今では650グラムにすぎない。

 ビスケットの「ジャファ・ケーキ」も、かつては1箱に1ダース入っていたが、今ではわずか10枚だ。

 シュリンクフレーションのロジックは、それに代わる手法――値上げ――よりも消費者に気づかれにくいというものだ。

 政府も長年、同じ方針を採用している。納税者が納める税金はほぼ変わらなかったのに、国家のサービスは低下した。

 そしてここに来て、増税の形で値上げの時代が始まった。

 インフレーションとシュリンクフレーションという意地悪なコンビを前に、有権者にはより少ないサービスに対してより多くの税を納めることが期待されるようになる。

増税よりは気づかれにくいサービス低下

 これは厄介な転換だ。

 保守党は2010年に政権を奪って以来、まさに小売業者と同じようにシュリンクフレーションを駆使してきた。緊縮財政が始まった頃は、国家の規模が縮小したものの、コストは減らなかった。

 対国内総生産(GDP)比で見ると、政府の歳出は金融危機直後の46%をピークに39%に縮小した。税収は約32%という過去の標準的な値で推移した。

 だが、市民が享受するサービスは減少した。

 しかも、買い物客がフラズルズやジャファ・ケーキの目減りに気づかないのと同様に、有権者も当初はあまり気にかけなかった。