(英フィナンシャル・タイムズ電子版 2022年2月10日付)

エルドアン氏はかつてイスタンブール(写真)の市長でもあった

 トルコの専制的な大統領レジェップ・タイイップ・エルドアン氏はかつてないほど、自分の権力に限界がないかのように振る舞っている。

 それも20年間にわたってトルコ政治の頂点に君臨した後、最も脆弱に見えるまさにその時に、だ。

 このため、前年比のインフレ率が先月50%に迫り、エルドアン時代で最高水準に達した時、大統領はトルコ統計局のトップを解任した。

 エルドアン氏の与党・公正発展党(AKP)の支持率低下に寄与している食品・エネルギー価格急騰は解任劇にも全く反応しなかった。

ダメージの大きい経済政策

 エルドアン氏がトルコの議会制民主主義をロシア流の大統領制にすげ替えて以来、同氏の権限には縛りがない。

 だが、ワンマン支配を敷いたことで、無鉄砲な判断ミスを犯すようになった。

 AKPの創設メンバーを全員追い出し、真面目な経済的専門知識をすべて捨て去った後、エルドアン氏の周囲にはもはや、スルタンは裸だと言う人が誰もいない。

 大統領は昨年10月、米国大使を含む西側諸国10カ国の大使の国外追放を命じた。

 実行すれば、北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるトルコと西側を結んでいた綻びかけた綱がついに断ち切られていた。

 エルドアン氏は結局、この脅しを取り下げた。

 だが、甚大なダメージをもたらしている経済政策からは手を引くことができないようだ。特に、利上げはインフレを抑制するのではなく、逆にインフレを招くという考えが捨てられない。

 エルドアン氏は中央銀行――そして解任された数々の総裁――を脅して利下げさせ、その結果、通貨リラが急落し(昨年、対ドルで44%下落)、インフレが高進した。