(英フィナンシャル・タイムズ紙 2022年2月2日付)

FRBは物価上昇にたいする感覚が鈍くなっていないか

 米国のジョー・バイデン大統領は11月22日、米連邦準備理事会(FRB)の次期議長にジェイ・パウエル議長を再指名した。

 その8日後にパウエル氏は連邦議会で証言し、「どうやら、あの言葉を使うのをやめ、我々の真意をもっと明確に説明できるよう試みるべき時が来たようだ」と述べた。

 パウエル氏が使うのをやめる言葉とは、「トランジトリー(一過性の、一時的な)」だった。

 FRBはこの魔法の言葉のおかげで、物価の急上昇を伴う力強い景気回復期においても極端に拡張的な金融政策に固執することができていた。

 皮肉屋なら、この言葉の使用をやめるタイミングには偶然以上の何かがあると考えるかもしれない。筆者にはとてもコメントできない。

 代わりに、FRBの方針転換が手遅れでないことを祈ることにしよう。

伝説のFRB議長の警鐘

 1955年に当時のFRB議長ウィリアム・マチェスニー・マーティンは、FRBとは「パーティーが本当に盛り上がりつつあるまさにその時にパンチボウルを片付けるように命じたお目付役と同じ立場にある」と喝破した。

 その20年ほど後の金融の混乱が示したように、これは理にかなったアドバイスだった。

 インフレを制御できなくなることは、政治的にも経済的にも打撃となる。再び制御できるようにするには、深刻な景気後退を経なければならないのが普通だ。

 ところがFRBはこのところ、そのリスクを冒している。アルコール度数の高いパンチボウルを片付け始めることすらしてこなかったからだ。