緊張が高まるウクライナ国境(写真:AP/アフロ)

◎前編「ウクライナ情勢でロシア相手に詰みつつあるバイデン政権の限界」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/68702)から読む

 緊張が続くウクライナ情勢だが、2月1日、ジョンソン英首相がキエフを訪問し、ゼレンスキー大統領と会談した。ゼレンスキー大統領は、今回の危機はロシアとウクライナの戦争ではなく、ヨーロッパの戦争危機だと警告した。これは恐らく、国境付近におけるロシア軍の駐留が3カ月に及ぼうとしていることへの不満だろう。

 同じ日、ハンガリーのオルバン首相と会談したプーチン大統領は、ロシアは自国の安全保障のために行動しているのであり、米国は自分たちを戦争に追い込もうとしている、ロシアの安全を保証する覚書が必要だという趣旨の発言をした。それに対して、オルバン首相は「重要なのは平和であり、EUはいつでも話し合いをする用意がある」と答えている。

 米国以外の役者が動き始めたのだ。

 果たして、バイデン政権は米国主導でウクライナ情勢を沈静化させることはできるのだろうか。

 プーチンがウクライナ侵攻をするのかしないのかは神のみぞ知る話だが、ウクライナにおける政府軍と分離独立を求めるロシア系住民軍との内戦の構図を知らずして、現時点で「強いロシアが弱いウクライナに侵攻する」という紋切り型の見方をするのは間違いだろう。

 国連安全保障理事会での議論は白熱したまま推移するだろうが、米露ともに常任理事国で決議への拒否権を持っている以上、同理事会による制裁決議は出てこない。すなわち、国連がウクライナ情勢において機能することは期待できず、発足から80年を経て金属疲労を起こしていることが露呈した。

 バイデン政権が1月27日に発表した対ロシア経済制裁案は非常に厳しいものだ。一例を挙げると、SWIFT(国際銀行間通信協会)の利用禁止だ。これは対中政策としてウイグルでの強制労働問題が議会で議論された際にも制裁案の一つとして取り上げられたが、最後は見送られた。それほどの劇薬なのだ。

既に効果は世界の金融・証券市場に現れており、ロシア国債は急落している。ただ、ロシアに強い影響を与えるには、中国などの友好国が支援しないことが条件となる。北朝鮮に経済制裁しても、中国国境から物資が送られれば効果が薄くなるのと同じである。