(英フィナンシャル・タイムズ紙 2022年1月28日付)

ドイツのアンゲラ・メルケル前首相が推進した脱原発がロシアを強気にさせている

 米国大統領に就任してほどなく、ジョー・バイデン氏はロシアとドイツを結ぶガスパイプライン「ノルドストリーム2」への経済制裁を解除した。

 米国が国際舞台に戻ってきたと宣言している時に、何もドイツとの関係を悪化させることはないだろう。君子危うきに近寄らずだ。

 いずれにしても、ドイツの天然ガス依存は、原子力発電の幕引きを急ぐことにしたアンゲラ・メルケル前首相の決断の当然の結果だった。

 今にして思えばあの解除は間違いだった、とバイデン氏は悔やんでいるかもしれない。

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナの近くで部隊を増強しているなかで米国とロシアの緊張が高まっている主因の一つは、ドイツが最大のガス供給国の機嫌を損ねるのを嫌がっていることだ。

ドイツにとってのガスパイプラインの意義

 ドイツに供給されるガスの半分はロシア産で占められる。

 平時であれば、1つのカゴに卵を多く盛りすぎているとの指摘で済むだろう。

 しかし真冬に、それもエネルギー価格が上昇していてロシアがウクライナとの国境付近に兵力を集めている時期においては、この状況はプーチン氏に武器を渡しているに等しい。

 奇妙なことに――そして米国政府も苦悩していることに――ドイツは今でも、このパイプラインはロシアに対する影響力を与えてくれるものであり、その逆ではないと半ば本気で信じている。

 ノルドストリームは商業的なプロジェクトであり、地政学的な意味は全くないというメルケル氏の主張を繰り返す閣僚もいる。