ソニーが「CES 2022」に出展したEVのプロトタイプ「VISION-S 02」(2022年1月5日、写真:ロイター/アフロ)

 アップルに続いてソニーがEV(電気自動車)開発に乗り出すなど、自動車業界への異業種参入が相次いでいる。だが、自動車業界への異業種参入は著名企業だけにとどまらない。新興国ではナショナリズムを背景に、国産EVを開発する動きが活発になっており、状況次第では新興国市場の構造が根本から覆る可能性がある。しかも、一連の動きの背景には「一帯一路」を推進する中国の戦略があり、非常にやっかいだ。(加谷 珪一:経済評論家)

既存メーカーにとって最も脅威となるのは?

 EVは内燃機関で駆動する従来の自動車と比較して部品点数が少なく、異業種からの参入が容易になることは以前から指摘されていた。しかもEVの場合、モーターや制御機器は汎用品で構成されるので、部品メーカーが駆動部分をモジュールとして提供できる。このため部品間の緻密な摺り合わせといった作業が不要となり、生産技術に乏しい企業でも容易に量産体制を構築できる。

 アップルには極めて高いブランド力があり、すでに多くの魅力的な製品やサービスを消費者に提供しているので、アップルカーを購入するのは感度の高い消費者ということになるだろう。ソニーはアップルほどコアな顧客を囲い込んでいないものの、世界的な著名企業であり、基本的な図式は同じである。一連の著名企業によるEV参入は、既存の自動車メーカーにとってある程度の警戒が必要だが、存在を脅かすほどのライバルにはならないだろう。

 むしろ既存の自動車メーカーにとって最大の脅威となるのは、無名のメーカーによるEV参入、あるいは水面下で進む自社開発EVの流れだろう