カザフスタンのトカエフ大統領(写真:ロイター/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 年明けの1月2日、旧ソ連邦のカザフスタンでは、燃料価格の高騰に抗議するデモが暴徒化し、旧首都である南部のアルマトイで市庁舎が放火されるなど、騒然とした状況になった。トカエフ大統領は、警察に対して警告なし射撃で徹底的に抑え込むことを厳命した。

 さらに、トカエフは、ロシア主導の軍事同盟である「集団安全保障条約機構(CSTO)」に治安部隊を派遣するように要請した。これに応じてロシアの精鋭部隊がカザフスタンに入り、公共施設などの要所を固めた。

 この結果、11日には事態は鎮静化し、ロシア軍は撤退を開始した。この間、9900人が拘束され、164人が死亡したとカザフ政府は発表している。また、トカエフは、暴動の責任をとらせる形で内閣を更迭し、スマイロフ第一副首相を新首相に任命している。

1月13日、カザフスタンのアルマトイで、集団安全保障条約機構(CSTO)の平和維持軍のカザフスタンからの撤退を開始する式典で自国の国旗をたたむロシア軍兵士(写真:ロイター/アフロ)

 暴動の真の理由が何なのか、ガスの値段が上がったことだけではなさそうであるが、正確な情報はまだ掴めない。政権内部の権力闘争という説もある。

カザフスタン、国土の広さは世界9位

 中央アジアに位置するカザフスタンは、世界第9位という広大な国土を持ち、石油、天然ガス、ウラン、クロム、銅、鉛、亜鉛などの鉱物資源が豊富である。ウランは世界一、クロムは世界2位の採掘量を誇っている。人口は1880万人である。19世紀半ばに、ロシアに征服され、1917年のロシア革命後はソ連邦に編入され、1991年のソ連邦解体によって独立共和国となった。

 カザフスタンと言えば、日本人には、セミパラチンスク核実験場や実業家・前澤友作の宇宙旅行でも話題になったバイコヌール宇宙基地がよく知られている。