ゼネコンの鹿島建設は、2021年1月にデジタル推進室を立ち上げた。5月に発表した中期経営計画(2021~2023)においても、主要施策の一つとしてDXの戦略的推進を挙げている。鹿島グループ全体のデジタル戦略を策定し、ビジョンとして「顧客・社会とデジタルで繋がり主体的に課題を発見・解決し便利・快適・安心で、希望ある世界を創る」ことを掲げ、「1.中核事業の一層の強化」、「2.新たな価値創出への挑戦」、「3.成長・変革に向けた経営基盤整備とESG推進」を3つの柱として、社内外との連携を加速しながら、DXを推進している。DX銘柄2020に選ばれた鹿島のDXを追う。

現在はDXの入り口にすぎない

 鹿島のDXが本気かは、昨年1月に設置したデジタル推進室を見れば分かる。室長に就任した真下英邦氏は、ITの専門家であることに加え、グループ会社で取締役、企画室で中長期経営戦略と経営に携わってきた人物であり、DXが従来のIT化とは異なったものと捉えていることを示している。

 真下氏は語る。「鹿島にとってのDXは、単にデジタル化による生産性の向上といったテクノロジーだけの話ではなく、デジタルをきっかけとした企業変革だと捉えています。そのために必要なのは、どのようになりたいのかという出口戦略をイメージすることです。経営層と各部門とが連携し、さらに社外の専門家と一緒になって進めています」

 推進に当たり、DXを3種類に分け定義した。中核事業の一層の強化のための「建設DX」、建設だけではない新たな価値創出への挑戦をする「事業DX」、経営基盤整備とESG推進のための「業務DX」を進める。

 建物の建設は、企画・開発、設計、施工、竣工後の維持管理・運営が一連の流れになるが、鹿島の強みは設計・施工領域である。しかし、顧客が求めるのは「一気通貫で面倒を見てもらえること」であると真下室長は考えている。「ウエルネス、カーボンニュートラル、高齢化への課題、地域とのつながりなどに対する要求が高まっています。また、スマートビルやスマートシティ・スマートソサエティも誕生しています。われわれゼネコンは、さまざまなハードとソフトを組み合わせて、トータルで最適な状態をお客さまに届けることが役割だと思っています」と語る。

 それぞれのフェーズで、現在進めているDXを見ていく。