欧米ではオミクロン株による新規感染者の増加に見舞われているが、死亡者数は大幅に減っている(写真:ロイター/アフロ)

(沖 有人:スタイルアクト代表取締役)

 ニュースを見ていると、新型コロナの感染者数が多い国として、米国、英国、韓国などが報じられることが多い。欧米はマスクを恥と感じる国民性などがあり、新規感染者数が増えている。要は感染対策が充分に取られていないのだ。しかし、新規感染者数は増えていても、死亡者数は大幅に減っているのが現実だ。これは、新型コロナを重症化させないというワクチンの効果が出ているからである。

 オミクロン株の脅威に敏感な今日、現在の状況と、少し先に起こることを想定しながら、これからの適切な行動を考えてみたい。

 感染の増加を表す数値に実行再生産数がある。これが1を超えると感染者数は増え、この数値が大きいほど急増する。デルタ株が猛威を振るった2021年夏に、新規感染者数は2.5万人に達し、重症者数は2223人に及んだ。感染者が重症化する割合は1.6%と厚生労働省から発表されており、重症者数の9割近くは死亡しているので、第5波に伴う感染者数の急増は絶望的に思えた。

 しかし、その状況を変えるゲームチェンジャーが突然、現れる。それがワクチンの接種率である。実行再生産数が1.5に達しても、私たちが免疫を持ち合わせてしまえば、その割合分だけ感染者を抑えることができる。

 現に、接種率が43%を超えたあたりで実行再生産数は1を割っており、12月に入るまで1を超えることはなかった。接種率が53%の頃には、実行再生産数は0.5ほどに下がっている。この数字は、1カ月後には新規感染者数が9割減ることを意味する。

 こうして、第5波の大波は第2波以前のかなり低い水準まで急速に落ち込んだのである。

 その要因は、ワクチンしか考えられず、その効果は3つある。1つ目は感染しにくくなる確率が未接種の人より92%減となること、2つ目は重症化する確率が9割減となること、3つ目はウイルスが感染可能な相手が減ることで死滅してしまう確率が上がることで、これを「集団免疫」と言う。

 つまり、2人に感染させる能力を持っているウイルスであっても、2人ともワクチンで免疫があれば、3人目まではうつしにいけないということだ。この集団免疫効果は絶大であった。

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