数々の醜聞が浮上している李在明氏(写真:ロイター/アフロ)

(田中 美蘭:韓国ライター)

「またか」というため息とともに、プロレスの罵り合いを見ているような錯覚に陥りそうだ。2022年3月に控えた韓国大統領選挙が本格化する中、激しさを増している与野党の候補者同士による“口撃”である。

 とりわけ、双方の身内に関するスキャンダルの応酬は見ていて見苦しい。クローズアップされるのは、候補者のスキャンダルばかり。両陣営ともに、スキャンダル以外に勝機を見出せない異常な選挙戦は、もはや迷走状態に陥っている。

 例えば、与党「共に民主党」の候補である李在明氏は、自身はもとより、親族など周辺のスキャンダルや不祥事が次から次へと露見し、話題にこと欠かない。スキャンダルの内容も、眉をひそめたくなるようなものばかりだ。

 これまでに取り沙汰されたものといえば、女優、キム・ブソン氏との不倫関係をはじめ、飲酒運転で検挙された過去や暴力団との親密な関係などが挙げられる。特に強烈な印象を与えたのは、李氏の甥が過去に交際女性との別れ話のもつれから、女性と女性の母親をめった刺しにしたという事件であろう。

李在明氏と不倫関係にあったキム・ブソン氏(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

 李氏本人や直属の家族の起こした事件ではないものの、李氏は甥の弁護を引き受けた上で、甥への「寛大な処分」を主張していたことも明らかになっている。甥の襲撃から自身は何とか逃れたものの、自宅から転落し重傷を負った交際女性の父親は、李氏がこの事件について釈明をした際に、「デートDV(交際相手間の暴力)」と発言したことに不快感を示し、強い口調で非難した。

 続いて浮上したのは、李氏の長男にまつわるスキャンダルだ。長男が違法賭博に興じ儲けていたこと、それに関連したやりとりと思われるネット上のチャット内容が流出したのだ。

 朝鮮日報など主要メディアの報道によると、李氏の長男は2019~20年にかけて、ネット上のポーカー関連の掲示板に、賭博で儲けたという自慢を分かっているだけで200件余り書き込んでいた。さらに、賭博で儲けた金でたびたび、買春をしていたことを示唆する投稿も明らかになっている。

 投稿の内容は、ソウル近郊に実在するマッサージ店の店舗名が書かれたものや、隠語を使って店や風俗嬢を揶揄するような書き込みだ。別ユーザーに対して、「(賭博で)金を儲けてお前も(女を)買え」と買春を勧めるものまであったという。

 大統領候補の長男の不道徳的な行為に対する批判に加えて、名門・高麗大学への進学や、卒業後にインターンを経て金融系企業に就職した経緯についても忖度を疑う声が上がっている。一連の長男の疑惑に対して、李氏はカメラの前で国民に土下座するなど火消しに躍起だ。