参院選を乗り切れば長期政権が視野に入る岸田首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

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(宮前 耕也:SMBC日興証券 日本担当シニアエコノミスト)

 2021年の最大の政治イベントは、菅政権から岸田政権への交代であった。

 菅政権は、掲げた公約通り、ワクチン接種の推進を通じて経済活動と感染対策の両立を図った。だが、東京五輪を迎えた夏場に感染第5波に直面。両立失敗の批判を浴び、菅首相は自らの手による衆院解散や自民党総裁選への出馬を断念した。自民党総裁選を勝ち抜いた岸田首相は、感染収束および野党共闘の失敗にも助けられ、衆院総選挙を乗り切った。

 2022年の政治は、夏に実施される参院選が最大の山場となろう。参院選の帰趨が、中期的な経済政策の方向性を大きく左右することは間違いない。

 岸田政権の政策は、10万円給付策の迷走に象徴されるように、朝令暮改的な変更が批判されている。だが、各種世論調査を見る限り、内閣支持率は意外にも安定している。短期間での政策変更は、悪く言えば信念がない、ブレていると評されるが、良く言えば臨機応変、柔軟とも評される。

 岸田政権は、来年夏の参院選を乗り切るべく、政策を推進しよう。政権発足から現在までの動向から判断して、主に4つのポイントが挙げられる。

 第一に、引き続き世論等の反応を見ながら、致命傷を招かないよう、朝令暮改的な政策変更を続けるだろう。その良し悪しはともかくとして、徐々に世論も短期的な政策変更に慣れてくるのではないか。

 第二に、国民の負担増に繋がる方針・政策を先送りしよう。例えば、雇用保険料の労働者負担分の引き上げは、参院選後に延期される模様だ。

 第三に、オミクロン株による新規入国禁止措置に象徴されるように、経済活動よりも感染対策を優先する可能性が高そうだ。岸田首相は所信表明演説で「最悪の事態を想定」して対応する姿勢を強調した。

 第四に、少なくとも参院選までは積極財政を続けよう。菅政権は感染第4波、第5波が拡大する下でも追加的な経済対策や補正予算編成に慎重だったが、岸田政権は感染が再拡大すれば積極的に財政出動を行う可能性が高いと思われる。岸田首相は所信表明演説で、「危機に対する必要な財政支出は躊躇なく行い、万全を期す」と明言している。