連載:少子化ニッポンに必要な本物の「性」の知識

自宅でラジオ放送に出演する晩年の渋沢栄一(中央)。右は後妻の兼子。子供たちは孫(ウィキペディアより)

 一つのことに秀でると、その人の失点は目立たなくなるものである。

「世の中のことはすべて心の持ちよう一つでどうにでもなる」

 そう語った渋沢栄一は、近代日本資本主義の設計者かつ指導者である。

 渋沢は大正5年(1916年)『論語と算盤』を著したが、その冒頭に記された「処世と信条」は、「論語と算盤は甚だ遠くして甚だ近いもの」とある。

 それは一見して相反するように見える論語と算盤が、実はとても近く、この2つを融合させることが最も重要であると示している。

 渋沢は「道徳経済合一説」という理念を掲げ、倫理と利益を両立させる。つまり経済を発展させても、利益を社会に還元しなければ、経済活動は持続しない。

 よって富を全体で共有することで、社会に還元し、国を豊かにする。その概念を渋沢は「合本主義」と名付けた。

 合本主義を講じるには大勢の出資者から資金を集め、利益が出たら分かち合うことになる。

 渋沢は、わが国初の近代銀行である第一国立銀行を設立した。

 その目的は少数が巨万な富を得ることよりも、より良い未来を共につくることとし共助、共創という底意がある。

 渋沢は企業の創設および育成に力を入れ、生涯、約500もの企業に関わった。