民主主義サミットを主宰したバイデン大統領(12月9日撮影、写真:UPI/アフロ)

「人権」だけでは習近平氏を抑え込めず

 ジョー・バイデン米大統領が主宰し、オンライン形式で行われた「民主主義サミット」が12月10日、閉幕した。

 バイデン氏は中国を強権主義国家(Autocracy)と見なし、「唯一の競争相手」と警戒する中国への対抗軸に民主主義と人権を据え、国際社会の結集を図るのがサミットの狙いだった。

 バイデン氏はこれにタイミングを合わせて北京五輪への「外交ボイコット」も打ち出した。理由は中国による新疆ウイグル自治区におけるウイグル族に対するジェノサイドへの抗議だ。

 かねて申し合わせていたアングロサクソン系の英国、豪州、カナダ、ニュージーランドが外交ボイコットに賛同したが、EUのフランスは同調せず、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は二つ返事で参加表明し、韓国の文在寅大統領は外交ボイコットを否定(つまり自身の出席も含む政府高官派遣の意向のようだ)している。

 バイデン氏がその動向を固唾を飲んで見守っている岸田文雄首相は迷いに迷った末、(ハンマー投げ金メダリストで体育学博士の)室伏広治・スポーツ庁長官を参加させる方向のようだ。

 内憂外患のバイデン氏は、9日、「民主主義サミット」の開会演説でこう言い放った。

「民主主義は継続的かつ憂慮すべき挑戦にさらされている」

 中国やロシアなど強権主義体制と見なす国の影響力増大への危機感がある。その裏には米国自身の国際社会での地盤沈下があることは言うまでもない。

 サミットには約107カ国・地域を招待し、「民主主義国家」と「強権主義国家」とを色分けした。

(パキスタンは招待されたが、親密な関係にある中国への配慮から出席を見送った。パキスタン外務省は「民主主義をめぐる問題は将来、適切な時期に取り組むことができる」との声明を出した)

https://www.state.gov/participant-list-the-summit-for-democracy/

 裏を返せば、バイデン氏が招待しなかった以下の14か国には「権威主義国家」の烙印を押したことになる。

 中国、ロシア、北朝鮮、キューバ、トルコ、ハンガリー、ベラルーシ、シンガポール、カンボジア、ベトナム、ミャンマー、ニカラグア、ベネズエラ、赤道ギニア。