台湾・新竹市のTSMC本社(写真:AP/アフロ)

(湯之上 隆:技術経営コンサルタント、微細加工研究所所長)

アリゾナは月産2万枚で5nm、熊本は月産4.5万枚で28~22nm

 世界最先端の微細化を独走する台湾TSMCは、各国や各地域から引っ張りだこである。まず、2020年5月、トランプ政権時代に米国から誘致を受け、アリゾナ州に月産2万枚の5nmの工場を建設することを決めた。次に、日本政府の誘致を受けて2021年10月に、熊本に月産4.5万枚の28~22nmの工場を建設することを発表した。さらに、欧州からも誘致を打診されている模様である。

 今のところ、TSMCが他国に半導体工場を建設することを決めたのは、米国と日本の2カ国である。しかし、TSMCのアリゾナ工場と熊本工場は規模もテクノロジー・ノードも違う。なぜアリゾナ工場が月産2万枚で5nmなのか? なぜ熊本工場が月産4.5万枚で28~22nmなのか? ちょっと月産4.5万枚は大きすぎるように思う。

 そして、米国も日本もTSMCの工場誘致に補助金を投じることになっているが、本当に、税金を投入する意義があるのか? 本稿では、米国は補助金を出す意味があるが、日本にはその理由はない結論を導く。TSMCが熊本に工場をつくりたいのなら、自力でつくれと言いたい。

 以下では、まず、米国がTSMCを誘致する事情を説明したい。