「歴史歪曲断罪法」の早期可決を言い出した共に民主党の大統領候補・李在明氏(写真:AP/アフロ)

(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)

 共に民主党の大統領候補・李在明(イ・ジェミョン)氏がまたとんでもない“プラン”を口にし始めた。11月28日、光州民主化運動関連現場を訪問した際に、「歴史歪曲断罪法」を国会で早期に通過させると述べたのだ。

「歴史歪曲防止法」の上を行く「歴史歪曲断罪法」

 少々説明が必要だろう。

 文在寅大統領は現在、1980年にクーデターを起こした軍が、それに反対する学生や市民を武力衝突の末に鎮圧した「光州事件」の解明が不十分であるとして、見直しを進めている。学生や市民に多数の犠牲者が出た光州事件は、軍側で誰が発砲を命じたのかなど明らかになっていない事実も多い。逆に事実の隠蔽や歪曲もあるとされる。

1980年月に起きた光州事件。学生らによるデモ隊は戒厳令の解除と軍の実権を握った全斗煥・国軍保安司令官の辞任などを要求した(写真:AP/アフロ)

 そこで2020年に共に民主党が中心となって可決したのが「光州民主化運動真相究明特別法改正法」だ。この法律では、光州事件に関する「歪曲・捏造」に対し、7年以下の懲役、7000万ウォン以下の罰金を含む厳罰を科すこととした。

 共に民主党はさらにこの流れを推し進める「歴史歪曲防止法」を国会に発議している。これは過去の独立運動や民主化運動に加え、日本統治時代の暴力・虐殺・人権蹂躙やそれに対する抵抗運動についての事実を歪曲したり歪曲に同調したりする行為を禁じるというものだ。旭日旗を使用しただけでも最大で懲役10年または2億ウォン(およそ2000万円)以下の罰金が科せられるという。反日色が強い法律であることも問題だが、韓国内では「その時々の政権が歴史を都合よく断罪することになりかねない」と批判されている。

 ところが李在明氏はそれをよりいっそう押し進めて「歴史歪曲断罪法」を早期に成立させようというのである。