立て替え工事を巡る背任の舞台となった日本大学医学部附属板橋病院(写真:YUTAKA/アフロ)

(フォトグラファー:橋本 昇)

 羊の群れが歩いている・・・ちょっと失礼かもしれないが、これが久し振りに覗いた都内のある大学キャンパスの学生たちを目にした際の偽らざる印象だった。

 かつてのアジ演説のスピーカーから響き渡る混沌としたキャンパスを覚えている者はもうおじさんと言われる年齢を過ぎた。

 今、時代は移り、秩序整然としたキャンパスを礼儀正しく真面目そうな学生たちが楽しそうに歩いている。もし今、大学の不正が発覚したら? 学生や教職員たちは声をあげるだろうか・・・?

 日大の井ノ口忠男元理事が逮捕された。日大アメフト事件も呆れたが、今度は日大板橋病院をめぐる背任事件である。検察の捜査は大学トップである田中英壽理事長にも及んだ。何かと黒い噂が付きまとう田中理事長には、これまでも度々捜査の手が伸びてはいたが、未だ闇は解き明かされていなかった。

 5年前にも税金の申告漏れを指摘されているが、実際には所得隠しの脱税だった。今回の家宅捜査でも自宅から約1億円の現金が見つかった。田中理事長は病院に逃げ込んだが、11月29日脱税容疑でついに逮捕された。

 これを糸口に検察はどこまで日大の闇に迫れるのか・・・。

日大全共闘の発端も大学上層部のカネ絡みの不正

 50年ちょっと前、日大生は大学の不正事件から大学闘争に突入した。私は闘争の残り火が燃えるキャンパスの中にいた。ヘルメットを被って。

 私達は叫び、権力に立ち向かったが、私達の残した物は何だったのだろうか。今回の日大事件で脳裏に蘇った当時の学生の声を先輩や仲間たちに取材した。

「あんな体育会系の筋肉バカが大学のトップとしてのさばり、大学を我が物にしているようじゃ、日大の腐れた体質は変わらないな」

 Y氏(日大中退)は開口一番吐き捨てるようにそう言った。彼は日大闘争を戦った日大全共闘のひとりだ。

2018年6月、日大全共闘結成50周年を機に集結、「全共闘」の旗を掲げ日大本部近くを歩く日大全共闘OBたち(写真:橋本 昇)
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