(英フィナンシャル・タイムズ紙 2021年11月29日付)

インフレの進行で経済に悪い影響を及ぼすとき、政治に対しては左側が攻撃されやすい

 金融引き締めに前向きな米国のインフレ・タカ派は常に、おおかみ少年のように騒ぎがちだ。

 2008年以降の数年間、結局一度も到来しなかったハイパーインフレについて警鐘を鳴らし続けたことから、タカ派が昨年同じ警告を発した時、はっとして注意を傾けた人が極めて少なかったことも意外ではない。

 そして今、タカ派は正しいが、その理由は間違っている。

 最近の米国のインフレ高進は、米連邦準備理事会(FRB)の低金利政策のせいだとタカ派は主張しているが、実際にはほとんど関係がない。

 民主党はそれでも、自分たちの根深い猜疑心が自己防衛意識をくもらせることがないよう注意しなければならない。

 持続的なインフレは、党が権力の座を維持する勝算を台無しにしかねないからだ。

民主党が罰せられてきた歴史

 歴史的に、インフレは右派の政府よりも左派の政府に格段に大きなダメージを与えてきた。責任を均等に負うべき時でさえ、罰せられたのは左派だった。

 共和党のリチャード・ニクソンは1972年、FRB議長のアーサー・バーンズをせっついて自身の大統領再選に向けて利下げさせた時、前任者だった民主党のリンドン・ベインズ・ジョンソンと同じくらいインフレをあおった。

 インフレ退治で名をはせたポール・ボルカーをFRB議長の座に送り込んだのは民主党のジミー・カーターで、これが1980年の大統領選でのカーター敗北の一因になった。

 その恩恵を受けた共和党のロナルド・レーガンも、失敗に終わったものの、自身の再選を目指す1984年の大統領選に向けてボルカーに利下げを迫った。