18年にトルコで殺害された、ワシントン・ポスト紙コラムニストのサウジアラビア人記者、ジャマル・カショギ氏の周辺人物も標的になったとみられている。

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは、フランスの人権派弁護士や活動家、インドのジャーナリスト、ルワンダ人活動家のiPhoneからもNSOのスパイウエアが見つかったと報告している。

 米ニューヨーク・タイムズによると米政府も動いている。商務省は21年11月3日にNSOグループを禁輸対象リストに加え、事業活動を通じた米国技術の使用を禁じた。

外部研究機関に寄付、サイバー監視乱用を阻止

 アップルは今回の発表と併せて、新たなセキュリティー保護を施した「iOS 15」の修正プログラムを配布した。これまでに標的になった可能性がある一部の利用者に通知していることも明らかにした。ただし、攻撃対象となったのは「ごく少数の利用者」としており、「アップルのサーバーがハッキングされたり、不正侵入を受けたりすることはなかった」と一貫した安全性を強調している。

 同社によると、今回の脆弱性はカナダ・トロント大学の研究グループ「シチズンラボ」が発見した。今後はこれら研究機関に対し、1000万ドル(約11億5000万円)と、今回の訴訟によって得られる損害賠償金を寄付する。サイバー監視の乱用阻止に向けた取り組みを支援していくとしている。

 これに対しNSOグループは反論している。広報担当者は「当社の技術はこれまでに数千人もの生命を救ってきた」と主張。「小児愛者やテロリストは技術的な安全地帯に避難しながら好き勝手に活動している。当社は政府に合法的なツールを提供し問題と闘っている。引き続きこの真実を訴えていく」と述べた。

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