奇をてらったことをし続けなければならないと思っているのだろうか(9月9日、ロシアを訪問したベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領、写真:ロイター/アフロ)

 6月の首脳会談以来、米ロ間ではいくつかの実務者協議が行なわれ、戦略対話やサイバー攻撃問題などでは一定度の前進があったとされている。

 だが、ここへ来てウクライナ方面での対立が、急速に再燃し始めた。このままでは、徐々に進み始めた米ロ関係の宥和も水泡に帰す恐れがあると、西側のメディアは指摘する。

 2014年以来、ウクライナ政府と半ば独立国と化した同国東部2州の一部との間では、小競り合いが断続的に発生し、2015年の独仏ロによる調停工作も効果を十分には出せてこなかった。

 その状況が過去2~3か月の間に、対立する双方の後ろに控える西側・ロシアの間での軍事的な動きへと発展しかねない雰囲気となってきた。

 西側メディアによれば、米国防総省・国務省関係者は、米ロ首脳会談後にいったんはウクライナ国境近辺から引き上げたロシア軍が、「再度またその近辺に10万に近い規模で結集し、この冬にかけてウクライナ侵略に乗り出す可能性がある」と述べている。

 それをウクライナの高官が、さらに伝言ゲームの拡声器となって喧伝する。

 さらには、別途騒がれてきたベラルーシ経由のEUに向けての中東難民・移民問題も、ウクライナ侵略を覆い隠すロシアの陽動作戦に過ぎない、と語られる。

 ロシアは9月に、大規模軍事演習「ザーパド2021」をベラルーシほかの演習場で行った。他国からの参加も合わせて、前年をはるかに上回る兵員20万が動員されている。

 ウクライナとは目と鼻の先であるから、この種の演習はウクライナ征服簒奪へのロシアとその大統領・V.プーチンの野心が消えていない証左だ、とウクライナには見えてくる。

 だが、指摘されているロシア軍の対ウクライナ国境への集結が事実なのか、そうだとしてその意図は何なのかは、しょせんは当事者以外には分らない話である。