(英フィナンシャル・タイムズ紙 2021年11月19日付)

ドナルド・トランプ氏が持つ抜きん出たスキルは、要(かなめ)となる物語を編み出し、すべての米国民の耳に確実に届くようにすることだ。
コンサルタントは不要だ。2016年の大統領選挙はこのスタイルで戦ったし、もし再度大統領選に出馬するなら同じようにやろうとするだろう。
1回目の物語は、ワシントンの沼から水を抜くというものだった。今度は、民主党が選挙を盗んでいるという話になる。
もしトランプ氏が2016年の自分の馬を諮問委員会にかけていたら、馬はラクダになっていただろう(編集部注:集団的な意思決定を揶揄する「a camel is a horse designed by committee」というイディオムがある)。
だが、トランプ氏は自分の考えを貫いた。
マイクロ・ターゲティングの落とし穴
民主党が見落とす傾向があるトランプ氏の思いも寄らぬ成功のカギは、米国民のいろいろなグループに同時にできるだけ幅広く、かつ分かりやすく語りかけることにある。
たとえその結果がニヒリズムであるとしても、だ。
これは、民主党のコンサルタントが好んでやまないマイクロ・ターゲティングとは正反対のやり方だ。
民主党が「国民」を代表する党を自認していることを考えると、これは皮肉だ。
だが、あれほど多くの異なる集団のそれぞれに合わせてマーケティングを調整していたら、普通の米国民のために戦うという方針を売り込むのは非常に難しくなる。